食欲が湧かなくて、夕食をほとんど残した。なにも手につかず、病院でのことを思い出してはベッドの上で啜り泣く。
 考えないようにするほど、余計に引き出してしまうのはなぜだろう。

 握りしめていたスマホが鳴って、虚な目を向ける。ぼんやりと眺める画面の先に、宮凪の文字が映った。
 飛び起きてみるけど、それが姉である空さんだったことに気付いて、少しだけ頭が覚めた。いつも分かりきった結果に期待して、バカみたい。

 開いたダイレクトメールには、URLが貼られているだけで、説明もメッセージもない。いきなり連絡されて、お姉さんからの印象もよくないだろう。

 ずっしりと重石が乗ったような体を起こして、もう一度目を凝らす。飛び込んで来たのは、『ウミノホタル』というアカウントのページだった。


【ひどいこと言って悲しませた。サイテーだ。でも、いつ悪化するか分かんねーし。この先泣かせるばっかで俺じゃ笑顔にできない】


 投稿されたのは、二時間ほど前。ちょうど私が病院を出た頃で、胸がざわつく。
 スクロールして下がっていくと、過去のツイートが残っていた。


【最近、光が強く出る。一回出たら治まるまで時間かかる。なんで?】


【もっと一緒にいたい。触れたい。もし俺がいなくなったら、泣いてくれんのかな。傷付けないためには、このまま会わない方がいいんだろな】


【出会う前なら心残りなんかなかった。でも、イナミとは仲直りしときたかったな】


 これは、宮凪くんの裏アカウントだ。どこにもそんな情報は載っていないけど、文面から断言できた。
 どういう心境で空さんが送ってくれたのかは分からない。

 綴られた言葉のひとつひとつに打ちひしがれながら、胸の奥から湧き上がる気持ちを流し出す。


「……宮凪くんの、ウソツキ」

 突き放すような暴言、拒絶も全ては私を遠ざけるためにしたこと。病状が良くないから、もしものことを考えて?


【歌えるうちに歌いたい。会いたい。話したい】


 涙で見えづらい視界の中、たった今投稿された文字が現れて息を呑んだ。



 ──死にたくない。