お店の並びを過ぎて、住宅街前の通りを横切る。かれこれ、一時間近く歩いていた。この町が宮凪くんの住む場所なのか、それ自体もわからないけれど。今は、宮凪くんの気配を少しでも探したい。

 日頃の運動不足か、足が疲れてきた。どこかで休憩しようかな。
 水を飲んでいると、鼻の頭にぽつりと冷たい水滴が降ってきた。雨だ──。

 予報では一日中晴れか曇りだったから、傘は持ってきていない。とりあえず、どこか雨宿りできる場所へと歩き出すけど、一気に大粒の雨へと変わった。
 ついてない。小走りになって、美容院らしき屋根の下へ入り込む。従業員の人に不審な目で見られて、申し訳なくなる。

 雨の下を、傘も差さずに突き進んだ。帰り道もわからず、ひたすらに進むしかない。歩道を歩いていたら、スピードの速い車に水をかけられた。
 泥水まみれで、惨めで、悲しくて、泣けてくる。こんなところで、私はなにをしているのだろうって。

 偶然たどり着いた小学校の門の前で、雨宿りをした。休日で天気もこんなだから、誰もいなくて助かった。
 膝を抱えて小さくうずくまりながら、フフフと笑ってみる。そうすれば、少しは前向きになって、気がまぎれると思った。

 だけど、すぐに口角は下がり、作った笑みは泣き声へと変わる。
 探す当てもなく、こんなことをしても見つかるわけがない。最初から分かりきっていたことだけど、運命を信じてみたかった。宮凪くんとなら、出会える気がしていた。
 現実は、そんなに甘くない。そう突きつけられて、虚しくなった。

 今、お母さんに迎えを頼んだら、きっと驚いてなにがあったのか事情聴取をされるだろう。上手く答えられる自信がない。
 そのとき、頭の上でポツポツと雨音が弾く音がして、のっそりと顔を上げた。


「こんなところで、なにしてるの?」