「……宮凪くん……宮凪くん? どこ?」

 翌朝、ちょうど学校が休みだったこともあり、私は町を歩きまわった。海賊公園はもちろん、河原へ向かい、路地裏の溜まり場へも足を運んだ。

 でも、宮凪くんの姿はない。今日は、もう少し違う場所を当たってみよう。スマホと少しのお金だけ入ったショルダーバッグを肩から掛けて、ひたすら道を進む。
 学校とは反対方向で、普段はあまり来ない地域。大通りはお母さんの車で通ったことがあるけど、ここから先の小道は未知の世界だ。

「隣町なのに、全然知らないところみたい」

 植木がたくさん並んでいて、静かな場所。坂道を上がると、小さなカフェやお店が見えてきた。
 そばにあった自動販売機で、飲み物を買おうとしたとき。ニャアと鳴き声がして、足元に子猫がいることに気づいた。

「かわいいね。きみは、迷子かな? それとも、ノラちゃん?」

 しゃがみ込むと、一歩下がった子猫がまたニャアと口を開く。
 首輪をしていないから、飼い猫ではないのかもしれない。この頃は少なくなっていると思ったけど、まだ彷徨っている子がいるんだ。

「水飲む? 味付きじゃあダメかな。今、普通のお水買うから、待っててね」

 買おうとしていた味付きはやめて、私は普通の天然水のボタンを押した。
 落ちていた大きめの葉っぱを皿にして、小さな水溜まりを作る。どうぞと前へ置くと、最初は警戒していた子猫が、そろりと前足を出して水を舐めた。
 喉が渇いていたのか、あっという間に飲み干して、催促するようにニャアと声を上げる。

「そっか、そっか。おいしいね。もう少しあげるね」

 嬉しそうな鳴き声をあげて、子猫が水を飲む。その姿を眺めながら、私もごくりと水分補給する。
 ふうと一息ついて、子猫の頭をそっと撫でた。驚いたのか体をビクリと跳ね上げて、走りさってしまった。

「……あ、行っちゃった」

 慣れてくれたと思ったけど、触ったのがいけなかったのかな。残された葉っぱを見て、どこか寂しい気持ちになる。
 宮凪くんも、私を避けたくなる何かが生まれたのかな。気づかないところで、嫌な思いをさせていたのかもしれない。
 口から出した言葉や、行動、どうしていたら一番よかったのか。終わったあとで、いつも悩む。