「笑ってごめんね。悪い意味じゃなくて、羨ましいなぁって。私、なんでも話せる友達って……いないから」

 宮凪くんとは、仲良くなれたと思っていた。病気を打ち明けてくれて、やりたいことを手伝わせてくれた。
 私は心を許し始めていたけど、宮凪くんは違ったのかな。心のどこかでは、迷惑だったのかな。
 文字すら残さないで、また消えてしまった。

「そうなの? じゃあ、友達になって下さいって手紙書くといいよ」
「……え?」
「前にも教えたんだよね。カッコいいお兄さんに。手紙書いて貼っておいたら、優しい誰かがなってくれるよーって」
「前会った時、ほんとに友達出来たって言ってたな」

 盛り上がる二人の後ろで、女の子が深く頷いた。勇気を出してと、後押しするみたいに。
 宮凪くんのくれた優しさは、笑顔は、言葉も全て嘘じゃない。
 あふれ出すほどの想いをぶつけてくれた。
 こんな私のことを、友達と認めてくれていた。
 頬に触れた指は温かくて、あの日のキスが蘇る。


「……みんなありがとう。私、頑張るね」

 このまま会えなくなったら、きっと私は後悔する。
 手を振る小学生たちに見送られて、公園を走り出た。何が出来るかなんて分からないけど、今思い立ったうちに行動したい。

 休むことなく向かい続けた足は、駅の裏側で止まった。息苦しさは数分で落ち着いて、路地裏を進む。あの場所には、宮凪くんが一緒にいた人たちが集まっていた。
 目を凝らして見渡してみるけど、宮凪くんの姿はない。もしかしたら、連れ戻されているかもと思ったけど、見当違いだったらしい。

「カイのやつ、ふざけんじゃねぇぞ。前に紹介した女と全然連絡取ってねーんじゃんか」

 その名前に、体が反応する。聞いてはいけないと思いながら、帰りかけた足は止まったまま。