飛び出した足は、一直線に宮凪くんの腕を取り、重く沈んだ腰を引き上げた。
「……ほた……る?」
「は、早く、帰ろ」
ぐいぐいと引っ張りながら、明るい光のある方へと進む。
「えっ、ちょっと、なにお前?」
後ろから威圧感ある女の子の声がして、心臓が縮み上がる。振り向かないで走り出すと、我に返ったように宮凪くんも足を急がせた。
「待てよ、こら! おい!」
追いかけてくる高校生たちから逃げながら、服を着て光を隠す。「こっち」と手を引かれたとたん、するりと抜けて、ぐわんと体が後ろへ倒れた。
「……てめぇ、なにしてくれてんだよ!」
腕をぐっと掴まれて、空に拳が振り上げられる。
殴られる……! とっさに顔を背けた瞬間、鈍い音と一緒に何かが吹っ飛んだ。さっきの高校生が倒れている。
「汚ねぇ手で……蛍に触んな」
鋭い視線で睨みつけると、宮凪くんは私の手を取って足早にその場を去った。数人の高校生は、舌打ちをしながらも、それ以上追いかけては来なかった。
「ちょっと……待って、宮凪、くん」
もつれそうな足と繋がれた手。息が上がって続かない。もう追われていないと知りながら、宮凪くんの速度は落ちない。
ひたすら走り続けて、公園へ逃げ込んだ。海賊船の中へ倒れ込んで、二人の荒い息が交差する。
「ああー、久しぶりにこんな走った。つれぇ」
ハハッと笑いながら、宮凪くんが天を仰ぐ。黒い天井には、貼られたままの『わかった』の文字。それを見つめながら、宮凪くんは小さく息を吐いた。
体を起こして視線を下ろす。まだ青色の残る首筋が、薄っすら汗ばんでいる。
「……ごめんなさい。あんなこと、しちゃって。怒らせちゃったんじゃ……ないかな」
私のせいで、宮凪くんは仲間に暴力を振るった。私が余計なことをしたから、私なんかを庇ったために。
恨まれて復讐でもされたらと考えただけで、背筋がゾッとする。
「……ほた……る?」
「は、早く、帰ろ」
ぐいぐいと引っ張りながら、明るい光のある方へと進む。
「えっ、ちょっと、なにお前?」
後ろから威圧感ある女の子の声がして、心臓が縮み上がる。振り向かないで走り出すと、我に返ったように宮凪くんも足を急がせた。
「待てよ、こら! おい!」
追いかけてくる高校生たちから逃げながら、服を着て光を隠す。「こっち」と手を引かれたとたん、するりと抜けて、ぐわんと体が後ろへ倒れた。
「……てめぇ、なにしてくれてんだよ!」
腕をぐっと掴まれて、空に拳が振り上げられる。
殴られる……! とっさに顔を背けた瞬間、鈍い音と一緒に何かが吹っ飛んだ。さっきの高校生が倒れている。
「汚ねぇ手で……蛍に触んな」
鋭い視線で睨みつけると、宮凪くんは私の手を取って足早にその場を去った。数人の高校生は、舌打ちをしながらも、それ以上追いかけては来なかった。
「ちょっと……待って、宮凪、くん」
もつれそうな足と繋がれた手。息が上がって続かない。もう追われていないと知りながら、宮凪くんの速度は落ちない。
ひたすら走り続けて、公園へ逃げ込んだ。海賊船の中へ倒れ込んで、二人の荒い息が交差する。
「ああー、久しぶりにこんな走った。つれぇ」
ハハッと笑いながら、宮凪くんが天を仰ぐ。黒い天井には、貼られたままの『わかった』の文字。それを見つめながら、宮凪くんは小さく息を吐いた。
体を起こして視線を下ろす。まだ青色の残る首筋が、薄っすら汗ばんでいる。
「……ごめんなさい。あんなこと、しちゃって。怒らせちゃったんじゃ……ないかな」
私のせいで、宮凪くんは仲間に暴力を振るった。私が余計なことをしたから、私なんかを庇ったために。
恨まれて復讐でもされたらと考えただけで、背筋がゾッとする。