──あんなにキレイなのに。どうして?

『いいか、蛍。大きくなって、もし仲間と逸れた海ホタルを見つけたら、手を差し伸べてやれ。こうして、優しく救うんだ』

 祖父の声が脳裏を過った。幼い頃、一緒に海ホタルを見たときのこと。
 水をすくった手のひらに、あふれんばかりの青い光。それは、ほんとに海ほたるだった? はっきり思い出せない。


「──蛍病(ほたるびょう)

 息を吐くほどの大きさで、聞こえた。消えかけの光をさすりながら、宮凪くんが口を開く。

「こいつ、蛍病って言うんだ。先天性の病気で、完治する確率はほぼゼロ。細胞の病気ってやつ」

 病気なんじゃないかと、疑ってはいた。明確なことは検索しても出てこなかったし、痛くも痒くもないと言っていたから、そこまで大ごとには考えてなかった。

 ──完治する確率が、ほぼゼロ?

 放心とする私の頬に、宮凪くんの指が触れる。

「そんな顔すんなよ。成人するまでには進行止まって、元気になる人の方が多いから」
「……ほんとに?」
「うん、ほんと」

 唇とは反対に少しだけ下がった眉が印象的で、しばらく頭から離れなかった。