「聖女様のドレスですか?」
 ラティアーナのドレスを仕立てたという仕立屋に、サディアスは足を運んだ。ここは昔からある仕立屋であるが、最近はデイリー商会に客を奪われつつあるともささやかれている。
 それでも、昔からの仕立屋であるため、ここを信頼している客も多い。特に、以前から懇意にしている者はなおのこと。
 デイリー商会も安くて質はいいのだが、年代によってはそのデザインを好まない者も多いという。
 だから神殿も、デイリー商会ではなく、この仕立屋にラティアーナのドレスを頼んだのだ。
「聖女様が聖女様らしくありますように、私たちもせいいっぱい縫わせていただきました」
 彼女は誇らしげに微笑んだ。
「布地も上等なものを選びました。レースもふんだんに使いまして、清楚な聖女様をイメージさせていただきました」
 ラティアーナのドレスがどれだけ繊細で手の込んだものなのかを、彼女は一つ一つ丁寧に説明をする。
 それを聞いただけでも、サディアスにはドレスの価値がなんとなくわかった。
 キンバリーが嘆くのも無理はないような、そんなドレスなのだ。
 いや、初めてあのドレスを身に着けて王城へとやって来たラティアーナは、お針子が言うように今までになく美しく、清楚で可憐であった。
「普段使いのものから、パーティー用のものまでと、神官長からは言われました」
 彼女に悪気はない。彼女はただ、自分の仕事に誇りを持ち、聖女様のドレスを仕立て上げるという栄えある仕事に全力で取り組んだだけ。
「あのドレスは絶対に聖女様にお似合いになると思ったのです」
 彼女の顔は、自信に満ちていた。