この村にはとある言い伝えがある。


『双子の女子(おなご)が生まれしとき、神と鬼とが現れる。姉を神に、妹を鬼に捧げればこの地に永久の平穏が訪れるであろう』


そんな、言い伝え。


当時神社の巫女であったサクヤヒメが聞いた、神からのお告げだった。


そして、その約1000年後、村に女児の双子が生まれた。


その双子は生まれても泣かず、幼き頃は常に一緒だった。


(くろがね)家に生まれた彼女らは、家柄も相まって重宝された。

それは、まるで人の扱いではないくらいに。


姉は氷雨(ひさめ)、妹は縢雨(かなめ)と名付けられ、すくすくと美人に成長していった。


氷雨は聡明で社交的な少女に、縢雨は賢明で外交的な少女に育った。


そんな彼女らの写る写真には、必ずと言って良いほどとある兄弟が写っていた。


双子のひとつ年上の(うるう)(けい)とひとつ年下の閏(こう)だ。


天が兄弟に与えたものは、実に素晴らしかった。
慧は、浮世離れした容姿と大人をも凌駕する知識を。
紅は、幸薄そうな美しい容姿と大人をも凌駕する身体能力を。


神や鬼に捧げるための双子より優れていた。
双子より、神に愛されていた。

兄弟の親は、大層喜んだ。





ある日、覚醒した。

なにかが、覚醒した。


そこから、双子と兄弟の命運は狂っていった。

















『愛妻と母胎』