家族は一度も、私を責めたりしない。

何も強要しない。

こうして、優しく問いかけるだけ。


同じ敷地内にあるこの別館の部屋に籠った時だって、泣かれたことはあっても、私を無理に引っ張りだすことはしなかった。

何十年も前に閉鎖してからずっと使われていなかった別館には、古い書物が沢山あって、

尚且つ人が寄り付かなかったので、籠るのに最適だった。

私がここに出入りするようになったと知った父が、最低限、部屋や水回りを整えてくれたのだ。

そして結果的に、本格的に引き籠るのにも一役買ってしまった。


けれど、父はそのことを後悔することはなく。

『君に安心できる居場所が出来たのなら良かった』と言っていた。