真っ青な空に白く輝く龍がひと筋の線を描く。
 やがてどこからか祝詞(のりと)が聞こえてくると、木々は芽吹き寒さは和らぎ花々が咲き誇る春が訪れる。
 古くから『色彩国(しきさいこく)』と呼ばれるこの土地は、白龍が()べ、『彩りの一族』に守られてきた。
 春夏秋冬を彩ることを生業(なりわい)とする彩りの一族は、四季折々の髪の色を持ち、それらを白龍へ奉納し、四季を呼んだ。
 春を祈れば季節は春に、夏を祈れば季節は夏に。彩りの一族の中でもひと握りの、季節を司る者が祈ればその季節がやってくる。
 国に住む人々は白龍と、そして彩りの一族を崇めてきた。彩りの一族もまた、自分たちのお役目を誇りに思ってきた。
 ただひとり、色を持たぬ子どもが産まれるまでは――。