「さすがにそれは、智恵理の考えすぎじゃない? だって、あれから二年も経ってるんだよ」
《でもさ、優吾くんが自殺する原因で思い当たることといったら、あの事件しかなくない?》
「それは……私たちは高校を卒業してから高槻くんと関わりがなかったからわからないでしょ。そもそも、当時も今も、あのことで高槻くんを責める人なんて、ひとりもいないよ」
《もちろん、そうだけどさ! でも、本人が一番気にして、自分を責めてた可能性は十分にあるでしょ?》
「うーん……。だとしても、そんなことで自殺なんてするかな」
《実際に、あの事件以降、優吾くんは男バスの部員と距離を取るようになったわけじゃん。親友だった大夢ですら距離を置かれて、優吾くんが高校卒業後は、どこでなにをしていたかも知らなかったらしいし》
智恵理の声が小さくなる。
私は、あの事件が起こる前の高槻くんと大夢くんの仲の良さを思い出して胸が痛くなった。
《大夢は優吾くんのお母さんと連絡先を交換してたから、優吾くんのお母さん経由で訃報を知ったみたいだけどさ――…って、あっ! ごめん。お兄ちゃんからキャッチ入っちゃった。とりあえず、話の続きはまたあとでね!》
「う、うん。わかった」
結局、話の途中で通話は切れてしまった。
喪服姿の私は、声が聞こえなくなったスマホを、しばらくその場に立ち竦んだまま眺めていた。