《昨日、大夢からちょっと話を聞いたんだけどさ……。優吾くんの遺体は、海で見つかったんだって。目立った外傷がない上に、ちゃんと服を着ていたってことで、警察には事件性はないって判断されたみたい》
遺体が見つかった場所の近くの浜辺に、高槻くんの靴が揃えて置いてあったのも発見されたらしい。
諸々の状況を鑑みた結果、自殺と断定されたということだった。
《……やっぱりさ、優吾くんが自殺したのって、〝あの事件〟が原因なのかな》
智恵理が、ほんの少し言いづらそうにつぶやいた。
「それ……大夢くんが、電話でそう言ってたの?」
間髪を容れずに尋ねると、智恵理は《ううん、言ってないけど》と、ひと呼吸置いてから答えた。
智恵理が言う〝あの事件〟とは、私たちが高校三年生のときに起きた〝ある出来事〟のことだ。
高校三年生になった高槻くんは、部活動の集大成ともいえる大会――いわゆるインターハイの予選が始まる直前にコロナに感染してしまった。
結果として海凪高校男子バスケットボール部は、その年のインターハイの出場辞退を余儀なくされた。
責任を感じた高槻くんは男バスのみんなと距離を取るようになり、数年経っても傷が癒えることはなく、ついには自死を選択するまで追い込まれてしまった――。