《……六花、大丈夫?》


私が黙り込んだせいで、智恵理の声のトーンがさらに落ちた。


「ごめん、大丈夫。でも、やっぱり……なんていうか、まだちょっと信じられなくて」


彼と出会い、同じ時間(とき)を共有した海凪高校――母校の近くにいるからだろうか。

悲しみを誤魔化しきれなくて、声が震えてしまった。

すると、智恵理も小さく鼻をすすったのが、受話器越しに聞こえた。


《ほんと……信じられないよね。まさか、あの優吾(ゆうご)くんが、自殺するなんてさ》


優吾――。〝彼〟の本名は、高槻 (たかつき)優吾という。

私と智恵理の同級生で、生きていれば大学二年生。今年、二十歳を迎える年だった。


《優吾くんは、どちらかというと自殺しそうな人を止めるタイプっていうか。絶対にやめろとか言いそうな感じだったのに》


私と智恵理は高校時代、高槻くんが所属していた海凪高校男子バスケットボール部のマネージャーをしていた。

当時の高槻くんは智恵理が今言ったとおりリーダーシップがあって、悩んでいるチームメイトがいたらさり気なく声をかける人格者で、常にチームの中心にいる人だった。

ちなみに、当時のまま残されていた男バスのグループメッセージに高槻くんの訃報を知らせてくれたのは、高槻くんの親友でチームメイトだった深田(ふかだ) 大夢くんだ。