「な、なにあれっ! 男目当てとかやる気ないとかなんなの!? 優吾くんって、イケメンだけど感じ悪っ」
ふたりの姿が完全に見えなくなったあと、智恵理がそう言って地団駄を踏んだのも同じだ。
私は智恵理を一生懸命なだめて、空になった高槻くんの席に目を向けた。
――変わってない。私は本当に、高校時代に戻ってきたんだ。
高槻くんは一度目のときと同じように、バスケットに対して真剣で、とても熱い想いを抱いている。
私は、そんな高槻くんのことを素敵だと思った。
自分には、あんなふうに怒りたくなるほど夢中になれるものがなかったから、すごく興味を引かれたんだ。
今思うと、これが高槻くんに興味を持ち始めたきっかけだった。
ぼんやりとそんなことを考えながら、私は机の上に出しっぱなしだった入部届を手に取った。
――堂々としていて、自分を持っている高槻くん。
そんな高槻くんが数年後、どうして自殺という道を選ぶことになるのだろう。
二十歳の智恵理は、高槻くんがコロナになったせいでバスケ部がインターハイを辞退するはめになったことが原因じゃないかと言っていたけれど、本当にそうなのだろうか。
タイムスリップ前もいくら考えてもわからなかったこと。
だけどタイムスリップして高校時代の高槻くんに会ったら、余計に高槻くんが自死した理由がわからなくなった。