「あ、そっか。つまりこれは、夢ってことかぁ」
ようやく状況を理解した私は納得して頷いた。
うん、夢だ。そもそも、考えるまでもないことだった。
だとしたら、早く目を覚まさなきゃ。
だって私はこのあと、高槻くんのお通夜に参列しなければならないのだから。
「とりあえず、ベタだけど頬をつねるべきかな? うん、そうしよう……って、イタタタっ!?」
ところが夢だと確信しながら頬をつねったら痛かった。
意味がわからず唖然としていたら、前の席の高槻くんが、また別のプリントを渡そうと振り向いた。
「……ひとり言、エグすぎ」
今度は手渡されることなく、プリントは無造作に机の上に置かれた。
私は頬が熱くなるのを感じながら、机から滑り落ちそうになったプリントを、慌てて捕まえた。
いや、これ、本当になにが起きてるの?
ドクドクと高鳴る鼓動の音はやけにリアルで落ち着かない。
再度、夢かどうかを確かめるために太ももをつねったら、やっぱり普通に痛かった。
え? もしかして、これ、夢じゃないの?
私は必死に動揺を押し込めながら、視線だけで周囲を見渡してみた。
すると、あることに気がついた。
――ここは、私が高校一年生だったときの教室だ。
そして教室内にいるのは、高校一年生のときのクラスメイトたち。
私の苗字が滝瀬だから前の席が高槻くんだというのも、当時と同じだった。