「た、高槻くん?」
「は? そうだけど……」
答えてくれた高槻くんは、怪訝そうに眉根を寄せた。
マスクをしていない高槻くんの顔を見るのは久しぶりで、思わず穴が開くほど見つめてしまった。
「っていうか、早くプリント受け取ってくんない?」
「あ……。は、はい……」
心臓の音が、ドキドキとうるさい。
差し出されたプリントを慌てて受け取った私は、茫然自失して自分の席に腰を下ろした。
周りの子たちは、私を見てクスクスと笑っている。
教壇に立っている先生には、「入学早々寝るなんて、滝瀬は気合入ってるなぁ」とからかわれてしまった。
いや…………いや。ちょっと待って。
当の私はといえば、大混乱だ。
受け取ったばかりのプリントを手にしたまま、必死に今の状況を頭の中で整理した。
なにがどうなっているのだろう。
私は今、目の前にいる――プリントを渡してさっさと前を向いてしまった高槻くんのお通夜に参列するために、約一年半ぶりに地元に帰ってきた……はずだった。
そして、お通夜の時間まで余裕があったので、母校の体育館に立ち寄った。
そこでバスケットボールを見つけて、感傷に浸りながらフリースローラインに立って、スウィッシュシュートを決めたところまではハッキリと覚えている。