「って、あんなの会話といえないか……」


そのときのことを思い出したら、苦笑いがこぼれた。

あの日、突然好きな人――高槻くんに話しかけられた私は焦って動揺してしまい、高槻くんの質問に答えることができなかった。

なにも言わない私に苛立ったのか、高槻くんに『今のは忘れて』と、冷たい声で言われて話は終了。

いたたまれなくなった私は高槻くんに背を向け、逃げるように体育館を立ち去った。


「ほんと、弱虫な臆病者……」


本当は高槻くんの質問に答えて、もっといろいろ話したかった。

許されるなら、〝高槻くんにも叶えたい願い事があるの?〟って、聞き返したかった。

そんなこと、今さら後悔しても遅いけれど。

高校時代を思い返すと苦い経験ばかりが頭をよぎって、胸が痛かった。