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「あぁ……くそっ」


 時は変わり、昼下がり。少年は目を抑えて机に突っ伏していた。その周りをクラスメイトが行き交う。

 当たり前のばす。そこは学校なのだから。


『あーあ、授業だりい』
『またこの子話しかけてきたし。いい加減諦めて欲しいんだけど』


「.....っ!」


 咄嗟に少年は耳を塞ぐ。それでも「声」は途切れない。


『うわぁ、今日もかっこいいー』
『あいつきっしょ。こっち見んなよ』


 誰かの思考が流れ込んでくる。それはそうだ。この声は、少年の脳内に直接的に響いているのだから。


「あの女め……っ!」


 怒りと憎しみに燃える少年は瞳は右目を強く抑える。そこに宿るは、昨夜に魔女と名乗る女性から与えられた力。あの見た目、あの行動は吸血鬼だと思ったが、彼女は魔女だと言い張っていた。一体、何が違うのか。


『あの男子、まーたぼっちだよ。友達一人もいないって可哀そ。よっぽど性格悪いんだろーなー』
『あいつ最近よく目を押さえてるよな。厨二病かっつーの』


「.....っ!!」


 再び頭痛が彼を襲う。たった今流れてきた「声」は、間違いなく自分に向けられたものだった。額に玉のような汗をかきながら、少年は必死に頭の中を空っぽにするしかない。


『なんであんな奴がいるんだろ?邪魔なんだけど』
『言葉遣い荒いし、なーんか近寄りがたいよなぁ』


 やはり「声」は聞こえてくる。少年は席から立ち上がり、口元を隠しつつ教室を逃げるように出た。


「こんな能力だったら……いらねぇよ」


 孤立した存在の自分なら、尚更に。