高天原(たかまのはら)神留座(かんづまりましま)す 皇親(すめむつ)神漏岐(かむろぎ)神呂美之命(かむろみのみこと)(もち)て 皇御孫命(すめみまのみこと)をば 豊葦原(とよあしはら)水穂(みずほ)の国を安国(やすくに)(たひら)けく所知食(しろしめせ)と 天下(あめのした)所寄奉(よさしまつり)(とき)事奉仍(ことよさしまつり)し 天津祝詞(あまつのりと)太祝詞(ふとのりと)(こと)(もち)(まを)さく……」


これは火を恐れ敬い、火の神に感謝申し上げ、火の災いが起きないように鎮めるための祝詞。


(かむ)伊左奈岐(いざなぎ)伊左奈美(いざなみの)(みこと)妹背(いもせ)二柱(ふたはしら)(かみ)嫁継給(とつぎたまひ)て 国の八十国(やそくに)(しま)八十嶋(やそしま)(給うみたま)ひ 八百万(やほよろず)神等(かみたち)生給(うみたまひ)て 麻奈弟子(まなおとご)火結(ほむ)すびの神を生給(うみたま)ひて 美保止(みほと)被焼(やかえ)石隠座(いわかくれまし)て 夜七日(よななよ)昼七日(ひななひ)吾をな見給(みたま)ひぞ吾奈背(わがせな)の命と(まを)(たま)ひき 此の七日(ななひ)には不足(たらず)して隠座事(かくります)こと(あやし)とて見所行(みほなほ)(とき)に 火を生給(うみたま)ひて御保止(みほと)所焼座(やかえまし)き 如是時(かかるとき)吾奈背(わがなせ)の命の吾を見給(みたま)ふなと(まを)すを 吾を見阿波多(みあはた)(たま)ひつと(まを)(たま)ひて 吾奈背(あがなせ)(みこと)上津国(うはつくに)所知食(しろしめ)すべし」


声は火を吹き消す風のように、強く清く高らかに。


「吾は下津国(したつくに)所知食(しろしめ)さんと(まを)して石隠(いはかく)(たま)ひて 與美津牧坂(よみつひらさか)至座(いたりまし)所思食(おもほしめさ)く 吾名妹(わがなせ)の命の所知食(しろしめ)上津国(うはつくに)に 心悪子(こころさがなきこ)生置(うみおき)て来ぬと(のたま)ひて 返座(かへりまし)て更に生子(みこ)をうむ 水神(みづのかみ)(ひさご) 川菜(かはな) 埴山姫(はにやまひめ) 四種(よくさ)の物を生給(うみたま)ひて 此の心悪子(こころさがなきこ)の心荒ひそは 水神(みづのかみ) (ひさご) 埴山姫(はにやまひめ) 川菜(かはな)(もち)鎮奉(しづめまつ)れと 事教(ことをし)悟給(さとしたま)ひき 依之(これにより)雑々(くさぐさ)の物を供へて」


腹の底が熱くなる感覚、私の中の言祝ぎが昂っていく。


天津祝詞(あまつのりとの)太祝詞(ふとのりと)の事を(もち)て 称辞(たたへごと)竟奉(をへまつら)くと(まを)す……!」


ボッと音を立てて瞬く間に怪火が消えた。

成功すれば冷水をかけた火が消えるように消滅するから、間違いなく成功だ。

やった!と小さくガッツポーズをする。