寮は門限が決まっていて、それまでに帰ってくることが出来るのであれば平日の外出も問題ない。けれど学校は山の中腹にあって、麓まで降りるのにはかなり時間がかかる。

バスなんて通っている訳もなく、唯一の交通手段である御神馬さまが引く車は学校と各地の社を繋ぐだけ。しかも気まぐれな御神馬さまはいつも行き先がバラバラで、乗っても降りたい場所で降りれる確率は限りなく低い。

それを思うと、休みの日でもなかなか外出しようという気になれないのだ。


学校外ともなればその縛りからも解放されて、奉仕後は普通の高校生のように街に繰り出すことも出来るというわけか。


早く早く、と皆からのブーイングを受けて薫先生は「ジャジャン!」と声を上げた。



「今年の一年生はまなびの社に決まりました〜! いぇーい!」

「しゃぁああッ!」

「京都キタァア!」

「都会! 都会〜〜っ!!」



あまりのみんなの喜びように驚く。

"まなびの社"。社史の授業では習っていないからそれほど大きな社では無さそうだ。

場所は京都にあるらしい。京都は中学の修学旅行で一度行ったことがある。



騒ぐみんなを呆れた目で見ている嘉正くんに尋ねた。


「ねぇねぇ嘉正くん。その"まなびの社"ってどんなお社なの?」

「えっと、まなびの社────愛日(まなび)神社は江戸時代初期頃に建てられた比較的若いお社で、御祭神は愛志鳴菊良比売(まなしなのくくらひめ)。今は花幡(はなはた)家が管轄していたはずだよ」


澱みなく答えた嘉正くんに感心のため息をつく。

聞いていた薫先生も「よく勉強してるね〜」と嬉しそうに頷いた。