「あー……まぁ……志ようが審神者だったからな。あいつも泉寿に負けず劣らずのお転婆娘だったもんで」
歯切れ悪くそう答えた禄輪さんに、今の私たちと変わらない四人の様子が容易く想像できた。
会ったことは無いけれど、「大丈夫大丈夫。ここでは私が一番偉いから!」と意気揚々と禄輪さんたちを社へ招き入れる志ようさんの姿が脳裏に浮かぶ。
写真では利発そうな大人しい女の子に思えたけれど、話を聞く限りなかなかヤンチャだったみたいだ。
禄輪さんがページを捲った。
今度はかむくらの社の本殿前に、ずらりと沢山の神職が並ぶ写真だった。
その真ん中にはお母さん達がいる。
日付は2005年、"かむくらの神職"と一言添えられていた。
「かむくらの、神職……? かむくらの社は巫女だけですよね?」
「ああ。かむくらの社に仕える神職は審神者────言祝ぎの巫女一人だけと定められている。これは正式な名称が無かったから仲間内でそう名乗っていただけなんだ」
「どういう事ですか?」
禄輪さんはアルバムからその写真を引き抜いた。
「簡単に言えば義勇軍だ」
義勇軍?と聞き返す。
「当時空亡戦には全ての社の神職が招集されて、その管理をしていたのが日本神社本庁の人間だったんだ。しかし、役員は現場から離れた場所で指示を出していたから指揮系統が上手く機能せず、たくさんの負傷者が出た。そんな状況で怯まず立ち向かえる奴なんてそういないだろ?」
確かにそうだ。
誰に従えばいいのかも分からず、次々と被害者が出て仲間が倒れる姿を見て、恐怖心を抱かないはずがない。
「それで本庁の一部の役員や社の神職が集って、先陣を切った。その集団を誰かが"かむくらの神職"と呼び始めて、自分たちもそう呼ぶようになったんだ。────これは、その当時の初期メンバーだな」