まさかこんなにも早くに三度目が来るなんてな。
そんなことを考えながら緋袴のリボンをキュッと結び直し、千早の裾の皺を撫で付けた。
まだ階位を取得していない私は、一部を除いて神事の際は白衣に白袴か学生服を着用しなければならない。
けれど鏡の中に移るのは、朱色の緋袴に鶴の模様が入った千早を身に付け、後ろできつく一つ結びした髪に丈長を飾った自分────本巫女の装束を着た自分だ。
なぜこんな格好をしているのかと言うと話は簡単で、禄輪さんから神楽殿で巫女舞の奉納をお願いされたからだ。
ほだかの社では毎年、三箇日の三日間毎日巫女舞が奉納される。それを今回私に頼みたいのだとか。
なぜ私が抜擢されたのかと言うと、ほだかの社が社として機能していたのは12年も前で、当時の巫女や神職らは他の社へ移籍したり結婚したり、単純に巫女舞を踊れる年齢ではなくなったりと様々な理由で深刻な人手不足だった。
今回は禄輪さんの人徳と昔のツテで何とか年末年始を乗り切るだけの人員は確保出来たけれど、巫女舞を奉納する巫女だけが決まっていなかったらしい。
そこで私に話が来たという訳だ。