以前眠気に抗えず船を漕いでいた慶賀くんが目の前に置いていた福豆が入った木箱に頭から突っ込んで豆をぶちまけて、千江さんに一時間くらい説教されていた。

そしてその日の晩御飯は大豆料理のオンパレードで、まなびの社の皆さんは「今年もか」という顔をしていた。

学生が豆をぶちまけて晩御飯が大豆料理になるのは毎年ある光景らしい。


「巫寿ホッチキスとテープ頼める? 俺袋に詰めるね」

「わかった」


一人でするよりも分担した方が効率がいいことを学んだ私たちはすぐに役割分担をすると作業を開始した。


「いやぁ、この時期に学生さん来てくれへんかったら、毎年間に合ってへんと思うから助かるわぁ」


千江さんがそう笑う。

もしかして毎年この時期に実習先として学生を受け入れている社は、豆詰めの人員が欲しいからなんじゃないだろうか。


「まなびの社の節分祭はどんな感じなんですか?」


嘉正くんがそう尋ねる。

すると千江さんが手を止めてニヤリと笑った。


「参拝者に福豆を配って皆で豆まきをするんやけど、まぁ他所に比べたらかなり本格的(・・・)やで」

「本格的?」


思わず聞き返す。

節分祭にちゃんと参加したことがないからなんとも言えないけれど、有名な大きな社だと有名人を呼んで福豆を配ったり、演武や神楽が奉納されたりするんだとテレビで見た。

福豆を参拝者に配るだけなのに、何が本格的なんだろう?