「どこって言われてもなぁ……授力は母親から引き継ぐ際に肉体に刻まれるもんやから、"ここのこの場所や"とも言えんしなぁ」
「肉体に刻まれる……じゃあせめて、"鼓舞の明を感じる"って言うのがどういう事なのかだけでも教えてください」
「う〜ん、なんかこうバシャーンサァーみたいな」
「バシャーンサァー……」
「アハハ! 私に説明求めても無駄無駄。めちゃくちゃ感覚派やもん」
そう言って志らくさんはケラケラと笑った。
どうしよう本当に何一つ分からない。私はどちらかと言えば言葉で説明できるようになってやっと納得する方なので、感覚で説明されると余計にこんがらがってしまう。
禄輪さんにも以前「深く考え込むくせがある」と笑われたっけ。
「あの……じゃあ志らくさんが初めて鼓舞の明を使えた時はどういう状況だったんですか?」
せめて何かヒントを、と食い下がる。
志らくさんは顎に手を当てる。
「初めて使えた時は確か……」
「確か?」
志らくさんが目を細めた。昔を思い出しているときの表情だ。
「お姉がかむくらの社に立つ前日やった。知ってるとは思うけど、言祝ぎの巫女はかむくらの社に入ったらもう二度と外には出てこれんやろ。"あんたの舞を最後に見たい"て言われて、ここで舞った時が初めてや」
お姉、先代の審神者の志ようさんのことだ。