「俺、凛のことを、諦められなかった……。何度も、もう連絡をするのはやめようって思ったけど、できなくて。格好悪いよな。男がウジウジ一人の女を思い続けるなんて。でも凛は俺にとってたった一人の大切な人なんだ。だから、だから……今すごく、嬉しい」
俊の瞳から、大粒の宝石がこぼれ落ちるのを見て、私もつられて込み上げてくるものを抑えられなかった。二人して嗚咽を漏らすように泣き続け、そして俊が私の身体に触れた。
二人の距離は、もう0kmだ。
「実は俺さっき……蓮に会ったんだ」
「え、蓮に? いつ? どこで?」
ひとしきり涙が出て落ち着いた頃に、俊が信じられないことを言った。
「凛の通っていた高校の前で。なんか必死な形相で校門から飛び出してきた男がいて。なんとなく、凛が話していた蓮ってやつの特徴に似ていて。だから、違うかもって思ったけど声かけたんだ。『もしかして、蓮、ですか』って」
今度は私の目がどんどん見開かれていくのを感じた。
俊と蓮が、言葉を交わしていたなんて。そんなこと、さっき蓮と話した時には何も言っていなかった。蓮は私に、あえて俊の話をしなかったのだ。
「そしたらあいつ、なんて言ったと思う? 『俺、いまから風間さんに告白してきます』ってよ。初対面なのにいきなりそんなこと言われて俺は拍子抜けしちまって。でもその後にちゃんと、『風間さんを支えてくれてありがとう』って頭を下げてきたんだ。だから俺も、『凛のそばにいてくれてありがとう』って言って、それですぐに別れた。颯爽と走っていくあいつを見て、俺は高校生の凛のそばにいたのが蓮でよかったって、思ったんだ」
きらきら光る宝石が、この場所でいくつも手に入った。
蓮との撮影の日々も、俊と想いが結び合ったことも、全部私の宝物だ。
意気地なしだった私を変えてくれたのは、この竜太刀の町と、二人の男の子たちだ。
「ありがとう、俊。私はこの場所でいろんなものから、卒業できた気がする。新しい一歩は、俊と一緒に歩いてく。だからこれからも、よろしくお願いします!」
さぶん。
遠くて聞こえないはずの波の音が、想像だけも耳の奥で鳴り響いている。
もう痛くない。岩に波がぶつかっても、私は自分の足で立っていられる。
蓮と一緒に駆け抜けた青春の思い出を胸に、俊と繋がれた奇跡を、ずっと大事に抱えて。
【終わり】
俊の瞳から、大粒の宝石がこぼれ落ちるのを見て、私もつられて込み上げてくるものを抑えられなかった。二人して嗚咽を漏らすように泣き続け、そして俊が私の身体に触れた。
二人の距離は、もう0kmだ。
「実は俺さっき……蓮に会ったんだ」
「え、蓮に? いつ? どこで?」
ひとしきり涙が出て落ち着いた頃に、俊が信じられないことを言った。
「凛の通っていた高校の前で。なんか必死な形相で校門から飛び出してきた男がいて。なんとなく、凛が話していた蓮ってやつの特徴に似ていて。だから、違うかもって思ったけど声かけたんだ。『もしかして、蓮、ですか』って」
今度は私の目がどんどん見開かれていくのを感じた。
俊と蓮が、言葉を交わしていたなんて。そんなこと、さっき蓮と話した時には何も言っていなかった。蓮は私に、あえて俊の話をしなかったのだ。
「そしたらあいつ、なんて言ったと思う? 『俺、いまから風間さんに告白してきます』ってよ。初対面なのにいきなりそんなこと言われて俺は拍子抜けしちまって。でもその後にちゃんと、『風間さんを支えてくれてありがとう』って頭を下げてきたんだ。だから俺も、『凛のそばにいてくれてありがとう』って言って、それですぐに別れた。颯爽と走っていくあいつを見て、俺は高校生の凛のそばにいたのが蓮でよかったって、思ったんだ」
きらきら光る宝石が、この場所でいくつも手に入った。
蓮との撮影の日々も、俊と想いが結び合ったことも、全部私の宝物だ。
意気地なしだった私を変えてくれたのは、この竜太刀の町と、二人の男の子たちだ。
「ありがとう、俊。私はこの場所でいろんなものから、卒業できた気がする。新しい一歩は、俊と一緒に歩いてく。だからこれからも、よろしくお願いします!」
さぶん。
遠くて聞こえないはずの波の音が、想像だけも耳の奥で鳴り響いている。
もう痛くない。岩に波がぶつかっても、私は自分の足で立っていられる。
蓮と一緒に駆け抜けた青春の思い出を胸に、俊と繋がれた奇跡を、ずっと大事に抱えて。
【終わり】