すっかり忘れてた……
やっぱり送ってもらえばよかったかな……?
急に不安になったけど、迷惑はかけたくない。
だから、自分で帰るしかないんだ。
怖い気持ちを押し殺して、歩き出した。
満月の夜になると、吸血鬼の吸血欲は異様に高まると言われている。
だから、満月の夜は特に被害が大きい。
明日はそのことがニュースで流れるんだろうなぁ……
なんて、明日のニュースを予想してみた。
何か考えてないと、怖くて動けなくなってしまうかもしれないから。
「あれ……?」
家まであと少しというところの道で、しゃがみ込んでいる人がいた。
どうしたんだろう……?
心配になって、すぐにその人のところへ駆けつけた。
「大丈夫ですか?」
私の言葉にその人は顔を上げた。
上がった顔を見て、息を吞んだ。
人とは思えないくらい綺麗な顔をしていたから。
艶のある漆黒の髪に、同じく綺麗な漆黒の瞳。
同じ黒髪、黒い瞳なのに全然違う。