ーー場所は美那の自宅マンション。
私は校外学習の時にスマホで撮った写真を眺めがらベッドに寝転んでいた。



「あぁ〜あ。澪にはあぁ言ったけど、滝原くんにどうやって謝ろう。話を聞いてくれないから家に押しかけるべき? でも、二重のオートロックだから、外でずっと待ちぼうけは嫌だしなぁ……」



ため息を連発しながら校外学習の画像をスライドしてると、母親が畳んだ洗濯物を持って部屋にやってきた。



「どうしたの? ため息なんてついちゃって」

「実はさ、恋をしてる事に気づいちゃって」


「相手は滝原くんでしょ」

「もう、お母さんまで……。みんな私以上に私の事を知ってるんだから……」



ほっぺを膨らませてうつ伏せになると、母はベッドに腰をかけて言った。



「……で、どうしたの? お母さんでよければ話を聞くよ」

「えっ、いいよぉ。恥ずかしくて言えないし」


「そうよね。美那は思春期だから恥ずかしくて言えないわよね。でも、お母さんも昔大恋愛して時は胸がクスクスしてた」

「……え、胸がクスクス?」



その言葉を聞いて驚いた。
澪に言っても伝わらなかった独自表現を血の繋がってないおばさんが何気なく使っていたから。



「大昔の話だからはっきり思い出せないんだけどね。彼の顔も名前も……。あっ、胸がクスクスというのはね、異性に心が動いてると実感した時や、恋をしてる時にそう感じていたの。こーゆー時は、いま自分が頑張りどきなんだなぁ〜って思ったりして」

「頑張り……どき……」


「うん。もし、美那が今そうだとしたら頑張って欲しいな。この恋が一生続くかもしれないし、もしかしたら消えていくかもしれない。それは神様しかわからないけど、いま心が何かを感じてるなら大切にしなきゃいけないんじゃないかな。だから、後悔しないようにね」

「お母さんは自分の心を大切にしてたの?」


「もちろん。お母さんは美那が娘としてこの世に誕生してから一番の宝物よ」



母親はそう言うと、私の頭を肩にもたれかからせた。
私は心強いエールを受け取ると頬を緩ませた。