ーー翌朝。
気分が沈んだまま登校した。
右手には紺色のお弁当袋。
今日はお弁当を受け取ってもらえるかわからないけど、約束は守りたかった。

私が泣きそうな顔のまま下駄箱に到着すると……。



「美那」



先に登校していた滝原くんは寄りかかっていた壁から離れて下駄箱に入ってきたばかりの私の前へ。
私は彼の姿を視界にとらえると、昨日の自分を反省して口を開いた。
すると……。


「滝原くん、昨日はごめんなさい」
「昨日はごめん。俺が悪かった」



2人同時に謝って頭を下げた。



「滝原くん……」

「昨日美那を追い出した後に言い過ぎたと思って反省したんだ。美那が言ってた事はほとんど正解だったから、ついカッとなっちゃって……」


「ううん、私こそ勝手な真似をしてごめんなさい。きっと見られたくないからしまっておいたのにね……。その上、滝原くんの気持ちも考えずに一方的な考えを押しつけちゃって……」

「…………」


「でもね。滝原くんに一つお願いがあるの」

「えっ……」


「1人で辛い想いをするくらいなら話してくれないかな。何も力になれないかもしれないけど、話してみたら窮屈(きゅうくつ)な気持ちが少し楽になるかもしれなから。1人より2人だよ!」



彼はまぶたを軽く伏せて何かを考えている様子を見せたが、2回うなずいた後にほんのりと口元を微笑ませながら目線を合わせた。



「うん、わかった」



彼の心が素直に開かれた途端、私はホッと胸を撫で下ろす。



「じゃあ、昨日家から閉め出したバツとして今日美味しいものをご馳走してね! 昨日はご飯作りの途中で帰らされたし」

「いいよ。何食べる? 外食でも行く?」


「ううんっ、滝原くんの家がいいっ!」

「えっ、俺んち?」


「滝原くんの家でご飯が食べたいの。(河合さんはしばらく吸血しないから今のうちに吸血しないとね)だから、二人でスーパーに行って食材を調達しようよ!」

「オッケー。じゃあ、近所のスーパーの『まるや』で夜7時に約束ね」


「うんっ! あっ、忘れてた。これ、今日のお弁当」

「サンキュー」



私はお弁当袋をグンと前に差し出すと、彼は受け取る。
無事に仲直りできた私達は、太陽の光をたっぷり浴びているひまわりのような笑顔になった。

しかし、サッカーの朝練後にたまたま通りかかった怜がその一部始終を下駄箱の反対側で聞いてた。



「まさか、あいつ……。この前は美那っちのことを普通に友達とか言ってたクセに、俺の気持ちに気付いてそれを逆手に取ったんじゃ……。くぅぅぅ〜〜っ!!」



怜は嫉妬心で煮えくり返ると頭を抱えた。