香蘭は褒められているのか、悪口なのか判断しづらい話をニコニコと聞いている。
(やはり私は誰からも愛される定めなのですね!)
もちろん、悪口だとは思っていないからだ。
ふと視線を動かすと、雪寧がなにやら一生懸命に焔幽に話しかけている。彼女は兄のことが大好きだ。まっすぐに焔幽だけを見つめている。
女嫌い……の焔幽も彼女のことは大切にしているようだ。
(麗しい兄妹愛、よいものですね)
ほほ笑ましく眺めていたつもりだったが、香蘭の心にかすかな違和感が込みあげる。だが、その理由がいまいちはっきりしない。
(喉に小骨が刺さったような嫌な感じですね)
この小骨は取り除きたい。香蘭はそう決意したが、じっくりと思考の海を漂う時間はなかった。
「あら、そろそろ始まるみたい。陛下はもう行かれたほうがよろしいのではないですか?」
雪寧が舞台のほうに目を向けて言う。その言葉を合図にそれぞれが自分の席に向かった。
側近は護衛を兼ねているので、夏飛と香蘭は焔幽の席の後ろのほうに座る。舞台の正面、特等席だ。ただ、すぐ隣に夏飛がいるのがどうにも落ち着かない。というのも、人たらしの香蘭にしては珍しく彼とはいまだ打ち解けられていないのだ。警戒されているような気がする。
(陛下の側近同士。ライバルといえる関係だからでしょうか)
「夏飛さんは私が陛下の側近をすることに納得がいっていないのですか?」
(やはり私は誰からも愛される定めなのですね!)
もちろん、悪口だとは思っていないからだ。
ふと視線を動かすと、雪寧がなにやら一生懸命に焔幽に話しかけている。彼女は兄のことが大好きだ。まっすぐに焔幽だけを見つめている。
女嫌い……の焔幽も彼女のことは大切にしているようだ。
(麗しい兄妹愛、よいものですね)
ほほ笑ましく眺めていたつもりだったが、香蘭の心にかすかな違和感が込みあげる。だが、その理由がいまいちはっきりしない。
(喉に小骨が刺さったような嫌な感じですね)
この小骨は取り除きたい。香蘭はそう決意したが、じっくりと思考の海を漂う時間はなかった。
「あら、そろそろ始まるみたい。陛下はもう行かれたほうがよろしいのではないですか?」
雪寧が舞台のほうに目を向けて言う。その言葉を合図にそれぞれが自分の席に向かった。
側近は護衛を兼ねているので、夏飛と香蘭は焔幽の席の後ろのほうに座る。舞台の正面、特等席だ。ただ、すぐ隣に夏飛がいるのがどうにも落ち着かない。というのも、人たらしの香蘭にしては珍しく彼とはいまだ打ち解けられていないのだ。警戒されているような気がする。
(陛下の側近同士。ライバルといえる関係だからでしょうか)
「夏飛さんは私が陛下の側近をすることに納得がいっていないのですか?」