詩清の心臓の音がこちらにまで伝わってくるようだ。どちらかといえばクールな詩清がこんなふうにかわいらしい表情を見せてくれるとは少し意外だった。男のふりをしていると、女性がいつも以上にかわいく見える。人間の心は複雑でおもしろいものだと香蘭は感心する。
詩清は笑って肩をすくめた。
「よく似ていますが、蘭楊さまのほうが洗練されている。やっぱり別人ですね」
ごまかせたようだ。嘘をつくときは『自分は嘘などついていない』と言い聞かせ、信じ込む。それがコツだ。
(今の私は宦官の蘭楊。香蘭という世界で一番美しく、賢い妹がいる)
自身の胸に手を当て、再度暗示をかけた。
詩清はクスッと楽しそうな笑みをこぼした。
「あぁ、自信たっぷりなところも兄妹でよく似ていらっしゃいますね。香蘭は、お兄さまの前で言うのもあれですけど……どっこも美女じゃないのに絶世の美女かのように振る舞うんですよ。もうおかしくて!」
兄の前で……と前置きしたわりには遠慮がない。だが、香蘭は詩清のこういうところがとても好きだ。彼女の話に周囲もワッと盛りあがる。
「そうそう。陛下に気に入られると困るから朱雀宮には近づかないとかね、トンチンカンなことばかり言って」
「でも、なにをやらせても上手なのはすごかったわ!」
「明け方か宵闇。ぼんやりしたところだと絶世の美女に見えなくもなかったわね」
詩清は笑って肩をすくめた。
「よく似ていますが、蘭楊さまのほうが洗練されている。やっぱり別人ですね」
ごまかせたようだ。嘘をつくときは『自分は嘘などついていない』と言い聞かせ、信じ込む。それがコツだ。
(今の私は宦官の蘭楊。香蘭という世界で一番美しく、賢い妹がいる)
自身の胸に手を当て、再度暗示をかけた。
詩清はクスッと楽しそうな笑みをこぼした。
「あぁ、自信たっぷりなところも兄妹でよく似ていらっしゃいますね。香蘭は、お兄さまの前で言うのもあれですけど……どっこも美女じゃないのに絶世の美女かのように振る舞うんですよ。もうおかしくて!」
兄の前で……と前置きしたわりには遠慮がない。だが、香蘭は詩清のこういうところがとても好きだ。彼女の話に周囲もワッと盛りあがる。
「そうそう。陛下に気に入られると困るから朱雀宮には近づかないとかね、トンチンカンなことばかり言って」
「でも、なにをやらせても上手なのはすごかったわ!」
「明け方か宵闇。ぼんやりしたところだと絶世の美女に見えなくもなかったわね」