焔幽は愛を嫌っている。いや、憎んでいるのほうが近いだろうか。その事実はわかるが理由は不明だ。気にならないといえば嘘になるが、香蘭の仕事は妃嬪選びであって焔幽の内面をケアすることではない。頼まれていない仕事までする義理はないだろう。
香蘭は彼ほど情にもろくはない。
「なんだ、人をジロジロと見て」
言って彼はニヤリとする。さりげなく送ってよこす長し目は香蘭以外の女性なら卒倒しているかもしれない。
「俺に見惚れたか?」
たしかに今日の彼は一段と見栄えがよい。華やかな場にふさわしい、豪奢な刺繍のほどこされた濃紫の衣。焚きしめられた上質な香が彼の色香を増幅させる。
「はい、新調された衣装がとてもよくお似合いで、美しいですよ。ですが!」
そこで香蘭は空をさすように人差し指を立てた。
「その手の台詞は私の専売特許ですから、勝手に奪わないでくださいませ」
香蘭は彼ほど情にもろくはない。
「なんだ、人をジロジロと見て」
言って彼はニヤリとする。さりげなく送ってよこす長し目は香蘭以外の女性なら卒倒しているかもしれない。
「俺に見惚れたか?」
たしかに今日の彼は一段と見栄えがよい。華やかな場にふさわしい、豪奢な刺繍のほどこされた濃紫の衣。焚きしめられた上質な香が彼の色香を増幅させる。
「はい、新調された衣装がとてもよくお似合いで、美しいですよ。ですが!」
そこで香蘭は空をさすように人差し指を立てた。
「その手の台詞は私の専売特許ですから、勝手に奪わないでくださいませ」