瑪瑙妃、瑠璃妃、玻璃妃、それぞれに個性的で魅力がある。が、誰か皇后向きだったかと聞かれるとやや答えづらい。
「やはり、月見の宴を待つしかないでしょうか」
 香蘭はひとりごちた。
 妃嬪選びという大事な任務があるものの、宴そのものは楽しみでもあった。蘭朱の時代からあった伝統行事で、王都のなかでも高台に位置する千華宮から眺める月はそれはそれは美しい。
(月明りに照らされる私はさぞかし神々しいでしょうねぇ。ますます千華宮が私の後宮になってしまう。あぁ、なんて罪深いのでしょうか)