「こんにちは。陛下からの差し入れの菓子をお持ちしましたよ」
「ありがとうございます。ちょうど柳花さまが遊びにいらしているので、みんなでいただこうかしら」
「ぜひ、そうしてください」
 女官は香蘭から菓子を受け取った。

「本当に仲のよいご姉妹なんですね」
 香蘭は東屋に顔を向け、目を細めた。
「それはもう! 双子というのはきっと特別なんでしょうね。柳花さまはお身体の弱い桃花さまを心配して毎日のように顔を出してくださいますよ。桃花さまも妹姫が大好きで、いつも柳花さまのお話ばかり」
 彼女はふたりの生家である景家からついてきて千華宮にあがったようだ。
 年嵩の彼女にとって、ふたりは娘でもおかしくない年齢。きっとかわいくて仕方がないのであろう。

「もともと千華宮に呼ばれたのは桃花さまのほうだったんです。でも桃花さまが柳花さまも一緒でないと嫌と聞かなくて」
 ほほ笑ましい話かのように女官は語ったが、香蘭は少しの引っかかりを覚えた。
(それは、柳花さま的にはどうなのかしら)
 香蘭の疑問の答えるかのように女官が続けた。
「柳花さまも桃花さまが心配だから自分も一緒に!とお父上に直談判なさったんですよ!」
(屈辱とは……感じなかったのですね)
 香蘭は自分の嫌らしさを少しばかり恥じた。世の中には麗しい姉妹愛がしかと存在していたらしい。