萎縮して本番に弱くなる者、意外な度胸を発揮する者、そして他人の足を引っ張ろうとする者。香蘭の言いたいことを察して、焔幽もうなずく。
「そうだな。あの場で女たちがどう振る舞うのか、俺もよく見ておくことにしよう」
* * *
月見の宴を翌日に控え、千華宮はにわかに活気づいていた。庭には舞台がしつらえられ、食事用のテーブルと椅子が並ぶ。大勢の人間が足早に行き交っている。
朱雀宮のとある室の窓から香蘭と秀由はその様子を眺めている。窓際に置かれた丸いテーブルの上には花茶と桃饅頭。焔幽が香蘭に与えた任務は秀由の管轄内なので、話をする機会も増えすっかり茶飲み友達になっていた。
「みなさん、お忙しそうですねぇ」
黄金色の液体のなかで赤い花がふうわりと咲いている。
その花茶をズズッとすすって香蘭は満足そうな吐息を漏らす。前の職場である雪紗宮の茶より上等で香りがいい。
「そうですな」
宴の準備にいそしむ人々を見る秀由の目はどこか恨めしげだ。
「仕事に邁進できるなんてうらやましいかぎりです。それに引きかえ私は……この職務は千華宮でもっとも価値と名誉があるというのに!」
「そうだな。あの場で女たちがどう振る舞うのか、俺もよく見ておくことにしよう」
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月見の宴を翌日に控え、千華宮はにわかに活気づいていた。庭には舞台がしつらえられ、食事用のテーブルと椅子が並ぶ。大勢の人間が足早に行き交っている。
朱雀宮のとある室の窓から香蘭と秀由はその様子を眺めている。窓際に置かれた丸いテーブルの上には花茶と桃饅頭。焔幽が香蘭に与えた任務は秀由の管轄内なので、話をする機会も増えすっかり茶飲み友達になっていた。
「みなさん、お忙しそうですねぇ」
黄金色の液体のなかで赤い花がふうわりと咲いている。
その花茶をズズッとすすって香蘭は満足そうな吐息を漏らす。前の職場である雪紗宮の茶より上等で香りがいい。
「そうですな」
宴の準備にいそしむ人々を見る秀由の目はどこか恨めしげだ。
「仕事に邁進できるなんてうらやましいかぎりです。それに引きかえ私は……この職務は千華宮でもっとも価値と名誉があるというのに!」