皮肉でもなんでもなく、焔幽は純粋に香蘭という人間の抱える矛盾を興味深く思っていた。誰からも愛され、誰にでも愛を与えるのに、おそらく彼女は愛を信じていない。
(同種の人間かと思ったが……もしかすると俺よりよほど歪んでいるのかもしれない)
「陛下?」
呼びかけられ、焔幽は意識を香蘭ではなく『妃嬪選び』に切り替えた。
「あぁ、それはわかっている。そういった面も踏まえて選んでくれてよい」
「では……」
彼女が自身の考えを述べはじめたので、焔幽は黙って話を聞く。
「まず外せないのは、翡翠妃、陽明琳さま。次に琥珀妃、甘月麗さま……」
焔幽はまだどの女にも寵を与えてはいないが、家柄のいい娘は千華宮にあがったときから『妃』の位を与えられ宮を持てる。香蘭はすでに『妃』の地位にある女を数名、それから宮を持たない『嬪』のなかから見どころがあるとして数名の名をあげた。
どの名前もとくだん意外なものではなく、むしろ誰もが予想する人物たちであろう。
香蘭自身もそれは感じているようで、どこかシュンとした様子で付け加える。
「おそらく夏飛さんや秀由さんに聞いても同じ答えでしょうね。ワクワクする答えを差しあげることができず申し訳ございません」
「別に突飛な答えを期待しているわけではない。むしろお前に求めているのは、その誰もが納得する候補者たちにどう序列をつけるか、だ」
(同種の人間かと思ったが……もしかすると俺よりよほど歪んでいるのかもしれない)
「陛下?」
呼びかけられ、焔幽は意識を香蘭ではなく『妃嬪選び』に切り替えた。
「あぁ、それはわかっている。そういった面も踏まえて選んでくれてよい」
「では……」
彼女が自身の考えを述べはじめたので、焔幽は黙って話を聞く。
「まず外せないのは、翡翠妃、陽明琳さま。次に琥珀妃、甘月麗さま……」
焔幽はまだどの女にも寵を与えてはいないが、家柄のいい娘は千華宮にあがったときから『妃』の位を与えられ宮を持てる。香蘭はすでに『妃』の地位にある女を数名、それから宮を持たない『嬪』のなかから見どころがあるとして数名の名をあげた。
どの名前もとくだん意外なものではなく、むしろ誰もが予想する人物たちであろう。
香蘭自身もそれは感じているようで、どこかシュンとした様子で付け加える。
「おそらく夏飛さんや秀由さんに聞いても同じ答えでしょうね。ワクワクする答えを差しあげることができず申し訳ございません」
「別に突飛な答えを期待しているわけではない。むしろお前に求めているのは、その誰もが納得する候補者たちにどう序列をつけるか、だ」