「あぁ。先に行かせたこの夏飛が騒ぎを聞きつけて俺に報告してくれたのだ」
聞きつけたとき、すでに自分も一緒だったことは黙っておく。
「まぁ! それは話が早くて助かりましたわ。お医者さま、雪寧さまをよろしくお願いいたします」
女はまるで焔幽を小間使いのように雑にあしらい、医師に雪寧の症状の説明をはじめた。彼女は雪寧に仕える女官。主は焔幽ではなくあくまでも雪寧、彼女を大事にすることは職務に忠実であるといえる。だがしかし……。
自分のために数多の女を集め存在している千華宮。この場所で、ここまでぞんざいな扱いを受けるとは思ってもみなかった。さすがの焔幽も呆気に取られた。すぐ後ろに控えている夏飛がクックッと笑いをこらえているのも気に食わない。
医師の見立ては軽い食あたり。ひと晩休めば治るだろうとのことだった。護衛役の夏飛だけを扉の前に立たせ、焔幽は雪寧とふたりきりになった。
「大丈夫か、雪寧」
布団から顔を半分だけ出した彼女は恥ずかしそうに頬を染めた。
「はい、医師にもらった薬が効いてきました。せっかく陛下がお茶をと誘ってくださったのに申し訳ありません」
「茶などいつでもいいから気にするな。それから、無理して陛下などと呼ばずとも以前と同じように『焔幽お兄さま』で構わぬ」
ふたりは異母兄妹だが母を早くに亡くした同士、同母の兄妹に近い親しみを互いに抱いていた。
聞きつけたとき、すでに自分も一緒だったことは黙っておく。
「まぁ! それは話が早くて助かりましたわ。お医者さま、雪寧さまをよろしくお願いいたします」
女はまるで焔幽を小間使いのように雑にあしらい、医師に雪寧の症状の説明をはじめた。彼女は雪寧に仕える女官。主は焔幽ではなくあくまでも雪寧、彼女を大事にすることは職務に忠実であるといえる。だがしかし……。
自分のために数多の女を集め存在している千華宮。この場所で、ここまでぞんざいな扱いを受けるとは思ってもみなかった。さすがの焔幽も呆気に取られた。すぐ後ろに控えている夏飛がクックッと笑いをこらえているのも気に食わない。
医師の見立ては軽い食あたり。ひと晩休めば治るだろうとのことだった。護衛役の夏飛だけを扉の前に立たせ、焔幽は雪寧とふたりきりになった。
「大丈夫か、雪寧」
布団から顔を半分だけ出した彼女は恥ずかしそうに頬を染めた。
「はい、医師にもらった薬が効いてきました。せっかく陛下がお茶をと誘ってくださったのに申し訳ありません」
「茶などいつでもいいから気にするな。それから、無理して陛下などと呼ばずとも以前と同じように『焔幽お兄さま』で構わぬ」
ふたりは異母兄妹だが母を早くに亡くした同士、同母の兄妹に近い親しみを互いに抱いていた。