同じぽっちゃり体型仲間でも、がっしりと逞しい香蘭とは趣が異なり、鵬朱は丸々と柔らかそうな身体をしている。見た目どおり、中身もおおらかだ。
 ほほほと鷹揚に笑う。
「うっすらではなく、ほんのりよ。ほんのり!」
「違いがわらないわ、鵬朱」

 犯人捜しの気配は雲散霧消した。そこに宮中医を連れた夏飛が戻ってくる。
「入るぞ」
 そう声をかけて焔幽は室の扉を開けた。女官たちは、焔幽の訪れのことなど忘れかけていたのだろう。大慌てで礼をとる。が、焔幽は軽く手を振り、それを制した。
「よい。仰々しいのは公の場だけで十分だ」
 そのまま夏飛と医師を従えて、雪寧の寝台に近づく。

「雪寧さまが伏せっていること、ご存知だったのですか」
 恐れもせずに、まっすぐな眼差しを向けてきたのは先ほどまでこの場を仕切っていた女官だ。彼女と焔幽の視線がぶつかる。
 ごわついて硬そうな髪、日に焼けて雅さの欠片もない肌、衣服の裾は土で汚れている。顔立ちそのものは醜いわけではないが、いやに凛々しい眉に大きな口とものすごく男性的だ。
(そのへんを歩く宦官のほうがよほどたおやかだな)

 田舎くさく野暮ったい。にもかかわらず、女には妙な威厳があった。歴代皇帝のなかでも随一の覇気があると称されている焔幽がほんの一瞬気圧されたほどに。
(なんなんだ、この女官は)