気持ちよいほどに完璧なタイミングのツッコミが返ってきた。
「伝説と謳われる千年寵姫、貴蘭珠。彼女に決まっているでしょう」
(では、九割方正解じゃないですか)
香蘭は心のなかでぼやくが、黙っておいた。
さすがに前世の記憶があるなどと正直に打ち明ける気はない。頭がどうにかなったと追い出されてしまったら困るからだ。今世の香蘭の生家はあまり裕福ではない。せっかく口減らしをしたのに戻ってしまっては両親がかわいそうだ。もっとも、前世の蘭珠も決して裕福な家の娘ではなかった。都の外れで暮らす落ちぶれた貴族。千華宮にも妃嬪候補としてやってきたわけではなく、香蘭と同じく女官の立場だった。
「彼女も名家の出ではないのよね。いち女官があっという間に陛下に見初められ、宮持ちの妃に。女官から皇后はさすがに前例がなく宮中は大反対。それでも陛下は彼女を守り純愛を貫き、立后させたのよね。素敵……」
いつもは辛辣でガサツな詩清がうっとりと頬を染め、羨望をのせた声でつぶやく。
(純愛を貫いたというより、ただ駄々をこねただけのような)
少なくとも彼に守ってもらった記憶はない。後宮にうごめく魑魅魍魎から蘭珠を守り、皇后の座に導いたのは彼女自身の才覚だ。
(私以上にふさわしい人物が見つからないからやっていただけで、皇后をしたかったわけでもないですし)
「とにかく!」と、詩清は話を締めくくることに決めたようだ。
「伝説と謳われる千年寵姫、貴蘭珠。彼女に決まっているでしょう」
(では、九割方正解じゃないですか)
香蘭は心のなかでぼやくが、黙っておいた。
さすがに前世の記憶があるなどと正直に打ち明ける気はない。頭がどうにかなったと追い出されてしまったら困るからだ。今世の香蘭の生家はあまり裕福ではない。せっかく口減らしをしたのに戻ってしまっては両親がかわいそうだ。もっとも、前世の蘭珠も決して裕福な家の娘ではなかった。都の外れで暮らす落ちぶれた貴族。千華宮にも妃嬪候補としてやってきたわけではなく、香蘭と同じく女官の立場だった。
「彼女も名家の出ではないのよね。いち女官があっという間に陛下に見初められ、宮持ちの妃に。女官から皇后はさすがに前例がなく宮中は大反対。それでも陛下は彼女を守り純愛を貫き、立后させたのよね。素敵……」
いつもは辛辣でガサツな詩清がうっとりと頬を染め、羨望をのせた声でつぶやく。
(純愛を貫いたというより、ただ駄々をこねただけのような)
少なくとも彼に守ってもらった記憶はない。後宮にうごめく魑魅魍魎から蘭珠を守り、皇后の座に導いたのは彼女自身の才覚だ。
(私以上にふさわしい人物が見つからないからやっていただけで、皇后をしたかったわけでもないですし)
「とにかく!」と、詩清は話を締めくくることに決めたようだ。