「詩清さんは妃嬪を目指していらっしゃるの?」
皇帝の顔を拝みたい理由などそれ以外には考えられない。そう思い尋ねてみたのだが、「馬鹿なの?」と言わんばかりの顔をされてしまった。
「お伽話じゃあるまいし、そんなものを夢見るほど暇ではないわ」
「お伽話ってことはないと思いますけど。女官の身で陛下の寵をいただく例は過去にもありましたでしょ?」
「そりゃゼロじゃないけど、せいぜい一夜かぎりの話よ。そこで運よく男児を授かる可能性がどれだけあると思う?」
身分や後ろ盾のない妃嬪にとって男児を授かることは最強のカードだ。幼い息子であっても強い味方になってくれる。もっとも、暗殺エンドの可能性が跳ねあがるのも事実だが。
「一度で身ごもることは難しいでしょうけど、陛下のお気に召しさえすればまたお渡りがありますわよ」
けろりと返す香蘭に詩清はほとほとあきれている。
「あのね。そのお気に召してもらうってのが、私たちのような下級女官には夢物語なのよ。衣装も宝飾品も化粧も妃嬪たちとはレベルが違う。目に留まるはずがないでしょ」
「そこはテクニックを使えばいいですわ」
香蘭はいたずらな瞳で詩清の顔をのぞき込む。
「印象的な出会いを演出してあげると、その後の関係性が大きく変わってきます」
「……印象的な出会い?」
詩清は興味を引かれたようにかすかに身を乗り出した。
皇帝の顔を拝みたい理由などそれ以外には考えられない。そう思い尋ねてみたのだが、「馬鹿なの?」と言わんばかりの顔をされてしまった。
「お伽話じゃあるまいし、そんなものを夢見るほど暇ではないわ」
「お伽話ってことはないと思いますけど。女官の身で陛下の寵をいただく例は過去にもありましたでしょ?」
「そりゃゼロじゃないけど、せいぜい一夜かぎりの話よ。そこで運よく男児を授かる可能性がどれだけあると思う?」
身分や後ろ盾のない妃嬪にとって男児を授かることは最強のカードだ。幼い息子であっても強い味方になってくれる。もっとも、暗殺エンドの可能性が跳ねあがるのも事実だが。
「一度で身ごもることは難しいでしょうけど、陛下のお気に召しさえすればまたお渡りがありますわよ」
けろりと返す香蘭に詩清はほとほとあきれている。
「あのね。そのお気に召してもらうってのが、私たちのような下級女官には夢物語なのよ。衣装も宝飾品も化粧も妃嬪たちとはレベルが違う。目に留まるはずがないでしょ」
「そこはテクニックを使えばいいですわ」
香蘭はいたずらな瞳で詩清の顔をのぞき込む。
「印象的な出会いを演出してあげると、その後の関係性が大きく変わってきます」
「……印象的な出会い?」
詩清は興味を引かれたようにかすかに身を乗り出した。



