「まぁ。ありがたきお言葉、恐縮です。けれど、すべて雪寧さまの愛らしさがあればこそですよ」
にこやかに答えつつも、香蘭の胸にかすかな不安が寄せる。
(雪寧さまは美しく愛らしい。これ以上目立ちすぎると、姉公主さま方のご不興を買ってしまうやも)
権力のある美女には誰も逆らわないが、力のない美女はとかくいじめられやすいもの。女社会をうまく渡っていくには、一国の君主に匹敵するレベルの深謀遠慮が必要なのだ。
(雪寧さまがいかにお姉さま方に憧れているか、そんなうわさ話でも流しておきましょう)
近頃の雪寧のアイドルは翡翠妃のようだが、そこはあれ。嘘も方便というやつだ。
「はい、完成です。お綺麗でございますよ」
「うふふ。ありがとう」
いつもよりグッと大人びた表情で雪寧は香蘭に礼を言った。そして、鏡台の引き出しからなにかを取り出して、香蘭に見せた。
「これ、今日の髪型に似合うかしら」
彼女の手のなかにあるのは金細工の簪だった。繊細な彫りがほどこされた上等な品だ。
「まぁ、素敵ですね」
「先日、陛下にお会いした際にいただいたのです。つけてみてくれる?」
彼女の顔に照れと誇らしさが同時に浮かぶ。兄である皇帝をよほど慕っているのだろう。
「もちろんです」
香蘭は簪を受け取り彼女の髪にさす。清楚な雪寧にぴったりだった。
(新しい陛下は贈りもののセンスはいいようですね)
にこやかに答えつつも、香蘭の胸にかすかな不安が寄せる。
(雪寧さまは美しく愛らしい。これ以上目立ちすぎると、姉公主さま方のご不興を買ってしまうやも)
権力のある美女には誰も逆らわないが、力のない美女はとかくいじめられやすいもの。女社会をうまく渡っていくには、一国の君主に匹敵するレベルの深謀遠慮が必要なのだ。
(雪寧さまがいかにお姉さま方に憧れているか、そんなうわさ話でも流しておきましょう)
近頃の雪寧のアイドルは翡翠妃のようだが、そこはあれ。嘘も方便というやつだ。
「はい、完成です。お綺麗でございますよ」
「うふふ。ありがとう」
いつもよりグッと大人びた表情で雪寧は香蘭に礼を言った。そして、鏡台の引き出しからなにかを取り出して、香蘭に見せた。
「これ、今日の髪型に似合うかしら」
彼女の手のなかにあるのは金細工の簪だった。繊細な彫りがほどこされた上等な品だ。
「まぁ、素敵ですね」
「先日、陛下にお会いした際にいただいたのです。つけてみてくれる?」
彼女の顔に照れと誇らしさが同時に浮かぶ。兄である皇帝をよほど慕っているのだろう。
「もちろんです」
香蘭は簪を受け取り彼女の髪にさす。清楚な雪寧にぴったりだった。
(新しい陛下は贈りもののセンスはいいようですね)