思わず秀由に詰め寄り、彼の襟元を締めあげた。
「ら、乱暴ですぞ。蘭楊どの。皇后の座を射止めたのはですね……」
彼はえらくもったいぶる。
「射止めたのは?」
「まだ知りません」
「はぁ?」
もったいぶっておいてこの答えか?と香蘭は浮かれた様子の老爺を蹴り飛ばしたい気持ちになる。
「手筈が整ったら正式に発表するとおおせでしたが、皇帝陛下が自らお決めになったことならば覆るはずもありません。いやぁ、やっと仕事が忙しくなるわけで、楽しみですなぁ」
最後のほうの彼の言葉はろくに聞かず、香蘭は朱雀宮へ走った。はっきりいって、嫌な予感しかしない。
「陛下!」
日頃は面倒と思いながらもこなしている入室までのやり取りをすべてすっ飛ばし、香蘭は焔幽の部屋の扉を開ける。なかにいた彼がゆっくりとこちらを向く。
「あぁ、香蘭か。ちょうどよかった、お前を呼ぼうと思っていたところだった」
香蘭は彼の前に座り、険しく眉根を寄せる。
「なんだ、その顔は。死にそうなモグラのマネか?」
「たった今、秀由さんに会いました」
焔幽は唇の端をニヤリとあげる。
「それは話が早くてありがたいな」
「皇后を、お決めになったとか?」
「あぁ、決めた」
決意を秘めた彼の瞳に香蘭の嫌な予感はほぼ確信に変わる。
「あらゆる面で、この千華宮で……いや瑞国中でも、もっともその地位にふさわしい女だ。誰だと思う?」
「ら、乱暴ですぞ。蘭楊どの。皇后の座を射止めたのはですね……」
彼はえらくもったいぶる。
「射止めたのは?」
「まだ知りません」
「はぁ?」
もったいぶっておいてこの答えか?と香蘭は浮かれた様子の老爺を蹴り飛ばしたい気持ちになる。
「手筈が整ったら正式に発表するとおおせでしたが、皇帝陛下が自らお決めになったことならば覆るはずもありません。いやぁ、やっと仕事が忙しくなるわけで、楽しみですなぁ」
最後のほうの彼の言葉はろくに聞かず、香蘭は朱雀宮へ走った。はっきりいって、嫌な予感しかしない。
「陛下!」
日頃は面倒と思いながらもこなしている入室までのやり取りをすべてすっ飛ばし、香蘭は焔幽の部屋の扉を開ける。なかにいた彼がゆっくりとこちらを向く。
「あぁ、香蘭か。ちょうどよかった、お前を呼ぼうと思っていたところだった」
香蘭は彼の前に座り、険しく眉根を寄せる。
「なんだ、その顔は。死にそうなモグラのマネか?」
「たった今、秀由さんに会いました」
焔幽は唇の端をニヤリとあげる。
「それは話が早くてありがたいな」
「皇后を、お決めになったとか?」
「あぁ、決めた」
決意を秘めた彼の瞳に香蘭の嫌な予感はほぼ確信に変わる。
「あらゆる面で、この千華宮で……いや瑞国中でも、もっともその地位にふさわしい女だ。誰だと思う?」