「でもね、たくさんあった腕輪のなかから私があれを選び取ったの。ギラギラと輝くあの石ならきっと願いを叶えてくれると思って」
 彼女の頬を透明な滴が伝う。
「妹の身でありながら陛下を独占したいと罪深いことを考えた。だからバチが当たったのね」
 香蘭はゆるゆると首を横に振った。
「雪寧さまの恋心は美しいものです。忌むべきものでも、恥ずべきものでもありません」
 実の兄を愛してなにが悪いというのだ。タブーなんてものは国と時代が勝手に決めるもの。そんなものに雪寧の純粋な思いが否定されるべきではない。

「陛下も同じようなことを言ってくださいました。妹としてではなく、ひとりの女として失恋することができて私は幸せ者です」
 焔幽が自分より先に彼女に会っていたことは聞いていた。『極刑にしてください』と泣く雪寧をなだめるのに苦心したと笑っていた。
 雪寧はクスリと苦笑して唇をとがらせた。
「けれど、あんなふうに優しくされると……ますます忘れがたくなってしまいます」
「あぁ。陛下はそういうところがありますねぇ」
 香蘭とは違う方向の人たらしだ。
「なので私、縁談を進めてもらうことにしました」
「えぇ?」
 予想外に話が飛躍して香蘭は目をパチパチさせた。