「えぇ。いつか雪紗宮にも来るのではと不安で……」
雪寧は手を伸ばし、香蘭の腕をつかんだ。グッと想像していた以上に強い力をかけられ、香蘭は少し驚いた。
「雪寧さま?」
「香蘭。早く、早く雪紗宮に帰ってきて」
雪寧は必死に訴える。香蘭を見つめる瞳にはなにか切羽詰まったものがあった。
「〝蘭楊〟は期間限定のはずよ。早く、私の女官〝香蘭〟に戻って。あなたがいれば安心だもの」
よほど幽鬼におびえているのだろうか。
彼女は香蘭の二の腕をつかむ手にますます力を込める。やや痛いほどだったので、香蘭はふと視線を向ける。
か細い手首にあれが巻かれている。赤、桃、白の糸を使った鮮やかな組紐、そして中央に飾りの玉。
(雪寧さまも、よく似合っていますね)
香蘭は目を伏せ、しばし考えた。
「申し訳ございません、雪寧さま。それには少し時間がかかるかと思います」
雪寧は手を伸ばし、香蘭の腕をつかんだ。グッと想像していた以上に強い力をかけられ、香蘭は少し驚いた。
「雪寧さま?」
「香蘭。早く、早く雪紗宮に帰ってきて」
雪寧は必死に訴える。香蘭を見つめる瞳にはなにか切羽詰まったものがあった。
「〝蘭楊〟は期間限定のはずよ。早く、私の女官〝香蘭〟に戻って。あなたがいれば安心だもの」
よほど幽鬼におびえているのだろうか。
彼女は香蘭の二の腕をつかむ手にますます力を込める。やや痛いほどだったので、香蘭はふと視線を向ける。
か細い手首にあれが巻かれている。赤、桃、白の糸を使った鮮やかな組紐、そして中央に飾りの玉。
(雪寧さまも、よく似合っていますね)
香蘭は目を伏せ、しばし考えた。
「申し訳ございません、雪寧さま。それには少し時間がかかるかと思います」