「流行っているんですか? 似たようなものをつけている子を何人か見かけましたね」
 女性が多く集まっている場所なので、流行の変化はすさまじい。あっという間に千華宮中で流行ったかと思うと、ひと月後には『時代遅れ』になっているのだ。
「えぇ! 今、女官たちはみんなつけています。かわいいし、なにより……」
 彼女はふふっと照れたように笑う。
「夜に、この玉を撫でながら願いを唱えると叶うらしいんです」
「へぇ。素敵なおまじないですね」
「蘭楊さまに好きになってもらえますように。そう願っている女官は多いと思いますよ」
 クスクスと彼女は笑う。

「……懐かしいこと」
 香蘭は思わずつぶやいて、ハッと口をつぐんだ。幸い、彼女には聞こえていなかったようだ。彼女の手首を彩る腕輪には見覚えがあった。蘭朱の時代にも流行したのだ。あの中央のガラス玉に神力があり、懸命に願い続ければ叶うと当時から言われていた。
(まぁ、時代を問わず女性はそういうものが好きですしね。流行が繰り返したということなのでしょう)
 うらないやまじないは女性の大好物、真偽のほどは二の次なのだろう。
(でも、あの腕輪は……)
 香蘭は前世で聞いた話を思い出す。あの腕輪にはルーツがあり、もともとは〝本物〟だったはず。もちろん商人が大量にさばいている品のなかに本物はないと思うが――。
「ちょっと教えてほしいのだけれど」