「髪が長く、緩いウェーブがかかっていました。指がほっそりと綺麗で。それと……」
 彼はゴクリと喉を鳴らす。
「夜の闇に瞳が赤く光っていましたね」
「赤い瞳……瑞国では見かけませんね」
 夏飛の言葉に香蘭が答える。
「幽鬼だからじゃないでしょうか。だって爪も短剣のように鋭かったわけでしょう。化物になっているわけですから生前の特徴とは異なるのかも」
「たしかに」

 そのときだった。グッと低くうなるような声がすぐそこでした。一瞬、証言してくれた宦官の体調が悪化したのかと心配したが、声の主は彼ではない。
「陛下!」
 夏飛が叫ぶ。焔幽がえづきをこらえるように両手で自分の口元を覆っていた。顔も唇も色を失っている。彼の身体はそのままぐらりと地面に倒れかけ、夏飛と香蘭で慌てて支えた。