「皇后に一番近い? とんだお笑い種ね! 陛下はまだ誰にもお手をつけていらっしゃらないのよ。私もあなたも、宮持ちですらない女たちも、みーんな仲良く零点でしょう」
自分もみじめになりそうな捨て身の攻撃だが、月麗はとんと気にしていない。
(彼女の目的は『陛下に愛されること』ではなく『明琳さまに勝つこと』なんでしょうね)
ノーダメージの月麗とは違い、明琳にはかなりきいたようだ。いつもクールな彼女の顔が朱を注いだようになる。気をよくした月麗は攻撃の手を緩めない。
「これはただの勘ですけどね、陛下はきっとあなたを選ばないと思うわ」
クッといまいましそうに下唇をかみ締めたものの、明琳は言い返すことをせずに踵を返した。珍しく月麗が勝負に勝ったようだ。
「戻りますわ」
「ちょっと、宦官たちも連れて帰ってよ! あなたのほどこしは死んでも受けたくない――」
月麗のわめき声を遮って明琳は背中で告げた。
「誤解なきよう。月麗さまへのほどこしではありません。琥珀宮で働くみなさまへの労いの気持ちです」
琥珀宮の女官や宦官たちが明琳の背に感謝と尊敬の念を送る。
(去り際に引き分けに持ち込みましたね。さすがは明琳さまです)
おつきの女官を引き連れて明琳は去っていった。
月麗が香蘭の存在に気がつき、片手をあげる。
「あら、蘭楊。いつの間に戻っていたの?」
自分もみじめになりそうな捨て身の攻撃だが、月麗はとんと気にしていない。
(彼女の目的は『陛下に愛されること』ではなく『明琳さまに勝つこと』なんでしょうね)
ノーダメージの月麗とは違い、明琳にはかなりきいたようだ。いつもクールな彼女の顔が朱を注いだようになる。気をよくした月麗は攻撃の手を緩めない。
「これはただの勘ですけどね、陛下はきっとあなたを選ばないと思うわ」
クッといまいましそうに下唇をかみ締めたものの、明琳は言い返すことをせずに踵を返した。珍しく月麗が勝負に勝ったようだ。
「戻りますわ」
「ちょっと、宦官たちも連れて帰ってよ! あなたのほどこしは死んでも受けたくない――」
月麗のわめき声を遮って明琳は背中で告げた。
「誤解なきよう。月麗さまへのほどこしではありません。琥珀宮で働くみなさまへの労いの気持ちです」
琥珀宮の女官や宦官たちが明琳の背に感謝と尊敬の念を送る。
(去り際に引き分けに持ち込みましたね。さすがは明琳さまです)
おつきの女官を引き連れて明琳は去っていった。
月麗が香蘭の存在に気がつき、片手をあげる。
「あら、蘭楊。いつの間に戻っていたの?」