「たった一日とはいえ、陛下は私がいなくてさぞ寂しかったことと思いますが……」
香蘭は彼からのツッコミを待つために言葉を止めたが、いつまで経っても反応がない。
「あの~?」
いぶかしげに、香蘭は彼の顔をのぞく。一日離れていただけで、定番になっていた応酬を忘れてしまうとはずいぶんと薄情な主だ。
近い距離で視線がぶつかると、至って真面目な顔で彼は答える。
「そうだな。思っていた以上に寂しく感じた」
彼は甘く笑んで、香蘭の腕をつかまえた。そのままグイと引き、焔幽は耳打ちした。
「だから、必ず無事で俺のところへ帰ってこい」
低く響く声に香蘭の胸がざわめく。蘭朱だった頃には感じたことのなかった感情の揺れだ。
「お前はまったく自覚がないようだから言っておくが、この千華宮にいる女はすべて俺のものなのだ。幽鬼に襲われるのは不貞も同然だからな」
「し、心配していると素直におっしゃればいいものを!」
香蘭は必死に形勢を立て直すが、その慌てぶりも見抜かれていたようだ。彼はクスクスと楽しそうに笑い、「俺がこんなにも素直になるのはお前といるときだけだが」とけろりと言ってのける。
「陛下もお忘れのようなので言っておきますが、私が帰る場所は雪紗宮の雪寧さまのもとですからね」
悔し紛れの捨て台詞を吐いて、香蘭は逃げるようにその場をあとにした。
香蘭は彼からのツッコミを待つために言葉を止めたが、いつまで経っても反応がない。
「あの~?」
いぶかしげに、香蘭は彼の顔をのぞく。一日離れていただけで、定番になっていた応酬を忘れてしまうとはずいぶんと薄情な主だ。
近い距離で視線がぶつかると、至って真面目な顔で彼は答える。
「そうだな。思っていた以上に寂しく感じた」
彼は甘く笑んで、香蘭の腕をつかまえた。そのままグイと引き、焔幽は耳打ちした。
「だから、必ず無事で俺のところへ帰ってこい」
低く響く声に香蘭の胸がざわめく。蘭朱だった頃には感じたことのなかった感情の揺れだ。
「お前はまったく自覚がないようだから言っておくが、この千華宮にいる女はすべて俺のものなのだ。幽鬼に襲われるのは不貞も同然だからな」
「し、心配していると素直におっしゃればいいものを!」
香蘭は必死に形勢を立て直すが、その慌てぶりも見抜かれていたようだ。彼はクスクスと楽しそうに笑い、「俺がこんなにも素直になるのはお前といるときだけだが」とけろりと言ってのける。
「陛下もお忘れのようなので言っておきますが、私が帰る場所は雪紗宮の雪寧さまのもとですからね」
悔し紛れの捨て台詞を吐いて、香蘭は逃げるようにその場をあとにした。