男性の装身具は女性と比べて少ない。だからこそ印象的なものを選びたい。
「陛下は金より銀が似合いますね」
「そうか。あまりこだわりはないが」
「いいえ、絶対に銀です」
 氷のようなと形容される彼にギラギラしたものは似つかわしくない。
「では、すべて香蘭に任せる」
 悪い気はしない言葉だ。香蘭は口元をほころばせた。

「宝玉は……そうですね、蒼もいいですがいっそ赤でも」
 香蘭は最高級の紅玉(こうぎょく)があしらわれた額飾りを手に取る。
(蒼玉の瞳との対比がきっと素晴らしいはず)
 自分の想像を確かめてみたくなり、香蘭は彼の額にそれを当ててみようとした。
「陛下、試着をお願いしても――」
 彼の美しい瞳に額飾りの紅玉が映り込む。その瞬間、焔幽はバッと勢いよく手を払った。
「やめろっ」
 彼らしくない、抑圧され、おびえたような声だった。