「そうしていると、妻のようだな」
彼の発言に香蘭は弾かれたように顔をあげる。からかっているのかと思いきや……彼は心からうれしそうに目を細めていた。香蘭の心臓が小さく跳ねる。
(ふ、不意打ちを食らいましたわ)
悪意や策略を巡らせる相手にはめっぽう強い香蘭だが、素直な人間には案外弱い。動揺を気取られないよう、細心の注意を払って声を出す。
「妻が夫の世話を焼くのは平民にかぎった話でしょう。残念ながら皇帝のあなたに、そんな幸せは訪れません」
焔幽はふっと小さく笑う。その顔もまた、香蘭の目を惹きつける。
「たしかにそのとおりだ。だが、香蘭。今日は返答のキレが悪くないか?」
隠したはずの動揺を見透かされたのだろうか。
無邪気で素直だったはずの彼が、一転して攻勢をかけてきた。
「俺は先日、ひとつ嘘をついた。最近女の趣味が大きく変わってな、モグラは案外好みのタイプだ」
香蘭の表情が固まる。うぬぬと口ごもってしまい、キレのある返答が思いつかない。
「……少しずつ、素が見えるようになってきたな。いい傾向だ」
焔幽は満足そうだ。
彼の発言に香蘭は弾かれたように顔をあげる。からかっているのかと思いきや……彼は心からうれしそうに目を細めていた。香蘭の心臓が小さく跳ねる。
(ふ、不意打ちを食らいましたわ)
悪意や策略を巡らせる相手にはめっぽう強い香蘭だが、素直な人間には案外弱い。動揺を気取られないよう、細心の注意を払って声を出す。
「妻が夫の世話を焼くのは平民にかぎった話でしょう。残念ながら皇帝のあなたに、そんな幸せは訪れません」
焔幽はふっと小さく笑う。その顔もまた、香蘭の目を惹きつける。
「たしかにそのとおりだ。だが、香蘭。今日は返答のキレが悪くないか?」
隠したはずの動揺を見透かされたのだろうか。
無邪気で素直だったはずの彼が、一転して攻勢をかけてきた。
「俺は先日、ひとつ嘘をついた。最近女の趣味が大きく変わってな、モグラは案外好みのタイプだ」
香蘭の表情が固まる。うぬぬと口ごもってしまい、キレのある返答が思いつかない。
「……少しずつ、素が見えるようになってきたな。いい傾向だ」
焔幽は満足そうだ。