桃花の衣装へのいたずらは鈴々の単独犯。柳花はなにひとつ把握していなかったのだ。
「悔しかったのです。桃花さまは柳花さまに助けてもらうばかりなのに! いつだって注目を浴びて主役になるのは桃花さま……あまりにも理不尽ではありませんか」
鈴々の心情は理解できぬこともなかった。
柳花は身体の弱い姉をいつも心配し、陰ながら支えている。けれど、彼女のそんな献身は周囲にはなかなか伝わらない。みなの気を惹き、注目されるのは天真爛漫な姉の桃花ばかり。
(まるで月と太陽みたいですね)
香蘭はあの日の満月を思い出す。
(月見の宴、月が称賛されるべき日でしたものね)
鈴々は本心から柳花を慕っているのだろう。それをよく理解しているからか、柳花は彼女を叱責する言葉を一度たりとも口にはしなかった。悲しそうに、苦しそうに唇を引き結んで、また泣き崩れてしまった鈴々を見おろしている。
(けれど、皮肉ですね。彼女のしたことは結果的にまた桃花さまを主役に押しあげた)
物語には必ず主役と脇役がいる。この世も同じなのかもしれない。
(月は、太陽に憧れることがあるのでしょうか?)
玻璃宮を出る際、柳花は幾度も頭をさげた。
「鈴々の失態は主である私の責任。いかような処分も甘んじて受けます。許されるのならば、月麗さま、美芳さま、そして姉の桃花へも私から直接謝罪を……」
「悔しかったのです。桃花さまは柳花さまに助けてもらうばかりなのに! いつだって注目を浴びて主役になるのは桃花さま……あまりにも理不尽ではありませんか」
鈴々の心情は理解できぬこともなかった。
柳花は身体の弱い姉をいつも心配し、陰ながら支えている。けれど、彼女のそんな献身は周囲にはなかなか伝わらない。みなの気を惹き、注目されるのは天真爛漫な姉の桃花ばかり。
(まるで月と太陽みたいですね)
香蘭はあの日の満月を思い出す。
(月見の宴、月が称賛されるべき日でしたものね)
鈴々は本心から柳花を慕っているのだろう。それをよく理解しているからか、柳花は彼女を叱責する言葉を一度たりとも口にはしなかった。悲しそうに、苦しそうに唇を引き結んで、また泣き崩れてしまった鈴々を見おろしている。
(けれど、皮肉ですね。彼女のしたことは結果的にまた桃花さまを主役に押しあげた)
物語には必ず主役と脇役がいる。この世も同じなのかもしれない。
(月は、太陽に憧れることがあるのでしょうか?)
玻璃宮を出る際、柳花は幾度も頭をさげた。
「鈴々の失態は主である私の責任。いかような処分も甘んじて受けます。許されるのならば、月麗さま、美芳さま、そして姉の桃花へも私から直接謝罪を……」